【通勤ラン】“普段着で帰宅ラン”するサブスリーランナーも!! 男女6名のリアル
(写真 倉島周平)
通勤ランのエキスパートにお集まりいただき、それぞれの通勤ラン事情を聞く“通勤ラン座談会”が都内近郊で行われました。十人十色とも言えるバラエティに富んだ内容で、”通勤ラン決定版”ともいえる内容に。男女6名が参加したこの座談会で明らかになった、6名のディープな通勤ラン事情をレポートします。
6名のプロフィールは、通勤ラン座談会・前編より。
前編のハイライト
通勤ラン座談会・前編では、通勤ランのなかでも6名全員が帰宅ラン派ということで、帰宅ランについての話題に。時短、満員電車回避、マイペースで自由に走れるなどといったトピックについて会話が盛り上がりました。そして、話題がバックパックやウェアなど通勤ランでのギアの話になった時
「この格好で走って帰ってるんすよ」
という衝撃的な発言が。そう話すのは“BEAMS RUN CLUBのリーダー” 牧野英明さん。2018年の東京マラソンで2時間52分06秒という初のサブスリーを達成した実力派ランナーです。牧野さんは、現在2時間以上かけて都内まで通勤しているそうですが、自宅の最寄りの駅の1つ2つ手前の駅で降りて帰宅ランをしているそうです。

牧野さんの帰宅ランの走る内容は、他の5名と遜色ないのですが、明らかな違いはその格好。“普段着で帰宅ランをする”サブスリーランナーの牧野さん。アパレルの仕事に従事するからこその斬新な発想を持つ、アパレル系ランナーのカリスマです。
「通勤に時間がかかり帰宅してから走る時間の確保が難しいので、時短で帰宅ランをしています。荷物を減らしたいですし、洋服屋に勤めていますのでダンサーやスケーターの格好のような普段着で走ります。例えば、伸縮性のあるビームスのスケボー用のチノパンで、手ぶらで走って帰ります」
ランニングで使える古着を探す
普段着で走ることを違和感なく話す牧野さんに、他の5名は興味津々の様子。それもそのはず、彼らは基本的にスーツなどのビジネススタイルで、そもそも“普段着で走る”という発想がないのです。また、多くの通勤ランナーやトレイルランナーたちは、コンパクトで機能性の高いバックパックを使用していますが、牧野さんはバックパックを使用せずに、古着を活用すると話します。

「収納性の高いランニングに使えそうな古着を探すんですよ。このNike ACGのジャケットベストなんかは“着るバッグ”なんです」
牧野さんはこの発想を“アパレル的なアプローチ”と表現します。このようなジャケットベストは本来、アウトドア用品としてカヌー用や釣り用に開発されている商品です。しかし、それらを「ランニング時に使えないだろうか?」と考えるのが牧野流。帰宅ランは手ぶらで走り、トレイルランニングなどの時にこの“着るバッグ”を着用するそうです。

「走れるスーツは製品化できないか?とか、ラン用でないアイテムもラン用に使えるのでは? と発想の転換をしています。収納性や速乾性など、これ着て走れるかなぁ?という目線で服を見ています。実は、ランニング用でないものでもランニングに使えるものは多いんです」
「この格好で走って帰ってるんすよ」発言から始まった牧野さんならではの斬新な発想は、通勤ランの内容を超越した新たな発見を他の参加者たちにもたらしました。
育児と仕事からリフレッシュできる“1人だけの時間”
育児と仕事をこなす人にとって運動時間の捻出は難しいものですが、座談会に参加した6名全員が帰宅ランの理由として挙げた“時短”は、この問題を解消してくれるキーワードです。今回の座談会に参加した武藤いずみさんは、結婚・出産を経験して、現在は小学生の息子を育てながら働いているママランナーです。武藤さんは走歴も通勤ラン歴も1年6ヶ月。彼女がランニングを始めるキッカケは、帰宅ランだったのです。
郊外に住み都内で働く武藤さんは、週2回ほど、仕事を終えて職場から東京駅や新宿駅まで走って、電車で帰宅。その後は家事をこなすため、朝から夜までハードスケジュール。特に子供の習い事などで週末は忙しく、あえて平日に走る時間を確保しているといいます。

「土日は息子のサッカーの送り迎えやお弁当を作ったり、忙しくしているので、平日をフル活用しています。毎日を忙しく過ごしていますが、帰宅ランは1人で過ごせる時間なので、育児や仕事のストレスを解消できるリフレッシュの時間なんです」
育児と仕事を両立する中で、職場と自宅の往復では気持ちを切り替えられる場所が少ないという人も多いことでしょう。武藤さんは帰宅ランを始めてから「仕事のストレスを持ち帰らず、家族に優しく接することができるようになった」といいます。より幸福感を感じられるようになったそう。
寝過ごした後に“暗闇”の道を走る
古着を愛用し、“着るバッグ”を紹介したカリスマランナーの牧野さん。彼の武勇伝はとどまるところを知りません。
「自宅の最寄駅が終点の2つ前なんです。2時間ほどの長い電車通勤で、ついつい寝過ごすことがあるんですが、終電で寝過ごせば終点から帰宅ランが始まります(笑)田舎道なので暗闇の道を走ってるんすよ。タクシー だと7000円ぐらいかかるので……」

そのため、“いつでも走れる格好であることが重要”と力説する牧野さん。
「走ることを想定せずに寝過ごしたときは、革パン、コンバースで20km走って帰ったこともありますね(笑)今ではそういうことにも対処できるように、“すぐに10km走れるスタイル”を念頭に置いて着こなしを意識しています」
現在では、帰宅ランの際にヘッドライトをつけて暗闇の道を走るノウハウを身につけたそうです。

「ヘッドライトをつけて暗闇の道を走りますが、満月の日は明るいですね。田舎道は暗くて危ないのですが、交通量が少ないのであえて道路の真ん中を走っています。車がきたら端に寄りますが、その時は車を運転する人が熊がいたかのようにビックリしていますね(笑)」
田舎道での長距離の帰宅ランはハードですが、大切となるのは“ランニングエコノミーを意識すること”だといいます。
「実際のレースでもそうですが、ランニングエコノミーの高い走りをしないと、気持ちよく家まで(ゴールまで)たどり着けないですからね(笑)」
ただいまの価値に気づくことができる
2014年の東京マラソンに当選したことをキッカケにランニングを始めたという上田怜さん。当時も現在も家から職場までそう遠くなく、2年前から練習の一環で通勤ランを始めたといいます。現在は、職場から自宅までの帰宅ランだけでなく、少し遠回りしてロング走をすることも多いそうです。
「私にとっての帰宅ランは家を終着点にしているので、帰宅後すぐにシャワーを浴びられるのがいいですね。帰宅ランを始めた当初、お昼ご飯が食べられなかった時など補給せずに走り出したら、帰宅するまでに死にそうになりましたけど(笑)」

そういって笑いながら帰宅ランを始めた当時を振り返る上田さん。帰宅時の「ただいまの価値が上がりました」という、ポジティブな話が続きます。
「本当に、ただいま!って感じです。普通に帰宅するのとは一味違います。通勤ランは、職場でも話題のきっかけになりますし、コミュニケーションに繋がると感じています」
ランニングや通勤ランを始めてから「心身共に健康的になった」というポジティブな意見が多く聞かれました。24時間制ジムの活用、普段着で走ることによって荷物を減らすなど、様々な通勤ランでの工夫やその魅力を発見できた今回の通勤ラン座談会でした。
皆さんもぜひ明日から通勤ラン、帰宅ランをしてみてはいかがでしょうか?
【合わせて読みたい】
・ランニングイヤホンまとめ
ランニングウェア=ジャージだと思っていませんか? ウェアが“動きやすいだけ”だった時代はもう終わり。お気に入りのデニムとTシャツの感覚で、休日につい着たくなって… 【レディースウェア】来週末はどう過ごす?スポーツMIX全盛の今、ランニングウェアの上手な使い方 – RuntripMagazine[ラントリップマガジン] |
・ランニングバッグの選び方とおすすめ7選
みなさん、こんにちは!前回は走ることが更に楽しくなるランニンググッズをご紹介しましたが、今回はその中から「ランニングバッグ」に絞ってご紹介します。前回の記事… ランニングバッグの選び方とおすすめ7選 ランニングをもっと快適に! – RuntripMagazine[ラントリップマガジン] |
・無料で使えるランニングアプリ
ランニングでココロもカラダもスカッと爽快!走る前には億劫になることもありますが、走って後悔することはないなんて話もよく耳にします。しかし、ランニングを習慣に… 【ランニングアプリ】無料で使えるアプリでランニングをもっと便利に、楽しく! – RuntripMagazine[ラントリップマガジン] |
6名の通勤ランスタイル
【通勤ラン必需品】
・イヤホン :トゥルーワイヤレス
・携帯バッテリー
・24時間営業フィットネスジムの鍵
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
ストレスフルな満員電車を回避するための“移動手段”であり、自分だけの世界を作れる“思考手段”です。働き方改革近辺で働く身として、満員電車が解消されるだけで、日本のストレスレベルがぐっと下がるのではないか、その手段として、移動手段としての“自脚”ユーザーが増えるといいなぁと思っています。仕事終わりで情報が頭に詰まっている状態での帰宅ランは、まさにアイデアの宝庫だと思います。
【通勤ラン必需品】
・ポケット多めのウェア
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
手取り早いトレーニングにして自由な移動手段ですが、 たまに、強制的な帰宅手段となります。 洗濯可能な普通の格好と、まずまず走れるシューズがあれば、すぐにでも始められる身近なランです。 時短と洗濯物の圧縮にも貢献。 通勤ランは手ブラが基本です。 ポケット多めのウェアを選ぶのがコツ。とくに多機能ベストは“着るバッグ”として便利です。
【通勤ラン必需品】
・デオドラントシート
・ジップロック
・Bluetoothイヤホン
・Apple Watch
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
ありがたいことですが、毎日が忙しく追われている感覚がどこかにあります。オーバーワーク気味になるとヘトヘトで、小さなことにイライラしてしまうことも。運動不足解消とリフレッシュのために、仕事と家との通勤時間を使って気負わずできると思って、何気なく始めました。走り終わった後には「もっと走りたい、楽しい!」と感じ、なにより“幸福感”で満たされています。
【通勤ラン必需品】
・デオドラント(シートやスプレー)
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
初めは、荷物を持って走ることに違和感がありましたが、“嫌い”から、いつしか“好き”になりました。今ではないと困る存在に……。四季を感じ、時短で走行距離を増やし、平日の忙しい中でも効率良く練習ができます。ただ1番大切なことは、経験でも方法でもなく“走ること”が芯から大好きだということです。私は走る時は音楽を聴きませんが、その時に考えることは“希望”しか出てきません。
【通勤ラン必需品】
・スタッフバッグ:荷物をコンパクトにまとめる
・コンパクト財布:入れ替えるのも手間なのでコンパクトで大容量なもの
・粉ミルクケース:途中から電車乗る場合のプロテインケース
・手拭い:汗を拭くにも銭湯に寄るにも便利
・Bluetoothイヤホン(AirPods)
・ビニール:着替えや荷物が汗で濡れないように
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
帰宅ランを始めたキッカケは「週末家族との時間を優先するために平日に走る時間を少しでも作りたい、家が遠いことをメリットに変えてロング走をしたい」という目的でした。今は、練習とは別のリラックスした気持ちで過ごせる楽しい時間、そして移動手段として行うことで、生活のリズムが整えられ、より生活が豊かになっている気がします。公道を闇雲に走るのではなく、歩行者の多い街中などでは焦らず歩いたり、立ち止まることで、気持ちの余裕も生まれます!
【通勤ラン必需品】
・24時間営業のジムの鍵
・カメラ
Q. あなたにとっての通勤ランとは?
「ただいまの価値に気づくことができる」のが通勤ラン(帰宅ラン)ですね。荷物や服装など制約が多い分、工夫で補うことも必要で、それらを含めて楽しめる・楽しむのが通勤ランの醍醐味かもしれません。