バスケ初心者からプロクラブ設立。アースフレンズ東京Zの誕生秘話
着実なルート設定で夢を近づける
ただ、バスケットボールチームを作っても、すぐにスポンサーはつかないと思っていました。リーグのインフラが整っていなかったので、スポンサーとしても投資することのリスクが高かったんです。なので、まずはファン作りだと。2009年から、サラリーマンをやりながら「ワイワイ練習会」という大人が楽しくバスケットボールができるサークル活動を、新宿区、大田区、品川区を中心に23区で展開し始めました。これからの時代は、大人になってもスポーツをすることや、自分の趣味に時間を割くことのニーズが高まっていくだろうと感じたからです。何より初心者レベルの自分がうまくなりたかった!(笑)。
その後は、バリバリチームというクラブ日本一を目指すチームを作りました。2012年には会社を辞めて社団法人を設立し、最終的にはそれを元にプロチームを作ることを目標としていました。そうしたら翌年の2013年夏に黒田電気という当時NBDL(※NBLの2部組織に当たる)に所属していた企業から、権利譲渡の話を頂戴したんです。その権利譲渡の審査に受かって、いきなりプロチームを持てることになりました。
当時はbjリーグとNBLがプロ化を進めている時期で、7月ぐらいにその話が来たのですが、8月に総会があるので、それまでに準備しないといけないと言われました。スポンサーや会社、選手などに関する様々な問題がありましたが、どうにか1ヶ月で草案を作って、権利譲渡の審査を通りました。最初は、NBDLに参入することになりました。
そして、クラブの運営会社となる株式会社GWCを作りました。バスケットボールの試合は何度も見に行っていたので、ホームゲームを運営するイメージはなんとなくありましたが、1番の問題は選手やコートをどうするかということ。選手の獲得のノウハウは分からなかったですし、そこに時間を割くと営業ができないという状況でした。
僕は「ワイワイ練習会」を始めた2009年から、ずっと世界で勝ちたいと思い続けてきました。だから、1番最初に日本のトップの監督を呼ぼうと考えたんです。そこで、日立サンロッカーズ東京(現・サンロッカーズ渋谷)でヘッドコーチをしていた小野秀二さん(アースフレンズ東京Z初代ヘッドコーチ)を獲得しようと決めました。
小野さんは見学にも来てくれて、3回目に会った時に正式な就任の要請をしたのですが、断られてしまいました。他にも様々なオファーが来ていたと思いますが、僕は諦めずにその後も小野さんと何度もお会いしていました。こういうコンディションの選手がいて、映像を見てもらいたいとお願いすると、「これは膝を怪我してるから、調べた方がいいよ」とアドバイスをくれて、調べると本当に怪我をしていたということもありました。このように9ヶ月間、相談に乗ってもらったりしていたら、徐々に小野さんも自分ごとのようになってくるんですよね。段々と世界で勝つための具体的なアドバイスもしてもらえるようになって、最終的には監督になってくれました。お金もないので、報酬は申し訳ないくらいの額でしたが、本当によくやっていただけたと思います。感謝しかありません。
やはり、お金の面は大変で、どこまでが赤字でも持ちこたえられるか、どこで黒字にしないといけない、といったことは計画していました。僕たちは最初から銀行融資を受けています。銀行からは貸せないと散々言われましたが、僕からすれば貸してくれない銀行はないと思っています。借りられないのは、貸してくれるほどの価値を伝えきれてないか、もしくは本当に価値がないだけです。
スポンサーは0から集めましたし、この仕事を始める前の人脈は一切使っていないです。「お金や人脈がないからできない」という話を良く聞きますが、僕は、お金も人脈もなければ、バスケットボールも初心者レベルですし、大田区に何かのゆかりがあるわけでもなかった。それでもできるということを伝えたかったので、今までの人脈は一切使わずに、スポンサーを集めました。スポンサー数は、1年目は20社ほどで、4年たった今は200社近くです。特に初期の頃は未来を語って、スポンサーを集めるしかなかったので、そこにお金を出してくれた方には、本当に感謝です。もちろん、地域・ファン、多くの企業のみなさま、関わっていただている全員に、心からありがとうの気持ちを強く思っています。
僕たちは、NBDLという1番下のリーグで、何もない状態でスタートしていたので、Bリーグができてインフラが整ったことはとても嬉しいです。プロリーグができてメディアの扱いも変わりましたし、これは僕たちの力ではできないことなので、感謝しかないです。Bリーグができる前と後では売り上げが大きく変わりました。
とはいえ、Bリーグはまだまだこれからです。今の売上を見ると、B1もB2もまだまだ伸びしろがあります。僕は常々、自分のクラブがBリーグ、さらには経済界全体の中で産業の1プレーヤーであり続けたいと思ってやっています。今までは大企業の福利厚生の1部としてやっていることも多かったかもしれませんが、ビジネスとして1産業のプレイヤーとなることが大切です。
プロチームがあることによって街が活性化して、経済がしっかりと盛り上がって、それによって好循環が生まれるというのが理想です。今は大田区と協力して事業を進めさせていただいていますが、この城南エリアが常に活性化していくということが大切だと考えています。Bリーグになってインフラがある程度整った以上、各チームの経営者たちが本気になって、産業の1プレイヤーとして売り上げを伸ばして行くことは必要不可欠です。
主体的にビジネスを生み出していく
今、僕たちは大田区総合体育館をホームアリーナとして使わせていただいています。各企業や地域の皆さまのご協力があってのことなので、本当に感謝しかありません。ただ、大田区総合体育館は収容人数が約4000人なので、B1リーグに昇格するためのライセンスである、収容人数5000人には到達していません。現在の平均入場者数は1400人程度で、土日だと2000人くらい入るようになってきています。実は僕たちはほとんど広告宣伝費をかけておらず、去年の広告宣伝費はチラシ代の300万円ほどです(笑)。
SNSにはもちろん力を入れていますが、リスティング広告などのWEBマーケティングには資本投下できていません。今はチラシだけで2000人近くを集めていますが、売り上げを積み重ねていって、プロモーション費用をもっと投下するようになれば、4000人収容の体育館では足りなくなるかもしれません。このままのペースで続けていけば、1万人や2万人収容のアリーナが必要になってくると思います。
大田区総合体育館は、ものすごく綺麗なアリーナですし、都内屈指の素晴らしい施設です。感謝しかありません。ただ、プロチームの興行専用に作られているわけではないので、チケット売り場やVIPルームがないですし、映像設備にも課題があります。大田区・指定管理業者様には多大なるご協力をいただいておりますが、試合の時は前日や当日の朝に搬入作業をして、試合当日の夜にすべて撤去する必要があります。これをやっている限りは社員の労力もかかりますし、準備できることも限られてしまいます。だからこそ、しっかりと自分たちが普段から使えるホームアリーナを整備していくことも重要なことだと考えています。今、東京商工会議所の大田支部青年部では、2万人収容のアリーナを作るプロジェクトが動いています。
具体的な場所はまだ決まっていませんが、私たちは大企業がバックについているわけではないので、産業の1プレイヤーとして、地域活動から地道にスタートする必要があります。
東京23区は、Jリーグですら本拠地を持つクラブがいない激戦区です。その中で、アースフレンズ東京Zがここまでやれているというストーリーを伝えていきたいと思っています。
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