【本庄ボーイズ】強豪高校も注目!子どもが自分で考える「異質」なチーム(前編)
結成当初からブレない指導ポリシー
取材に訪れたのは埼玉県北西部に位置する本庄市。ここで活動を行なっているのが今年で結成16年目を迎える本庄ボーイズだ。愛称は「本庄ニューヤンキース」。帽子やユニフォームの左胸に誇らしげに輝くNYマークは本家ニューヨークヤンキースと同じデザインだ。
「無許可で使うのもまずいと思ったので一応ニューヨークのヤンキース球団に使わせてくださいって連絡したんですよ。そしたら『野球発展のためにぜひお使いください』という返事を頂きましてこちらが驚きました(笑)。さすがメジャーリーグは違いますね」
そう話してくれたのは結成当時からチームを率いる横堀順一監督だ。本庄ボーイズの現在の部員数は40名で練習は土日のみ。場所柄、県内近隣市町の子どもだけでなく群馬から通う子も多い。結成当初の部員は2年生が8人、1年生が6、7人。なんとか試合ができるくらいの人数だった。そんな当時、横堀監督がまず驚いたのが大会の多さだったという。
「大会を勝ち上がっていった先にジャイアンツカップとかの大きな大会があることも知らなかったですからね(笑)。すぐにこれは全部の大会を勝ちに行くのは無理だなと思いました。ですので、毎年6月にある夏の全国大会への予選、これを突破することを1番の目標にしようと決めました。あとは春の全国大会の予選が秋にあるのですが、これを優先順位の2番目にしようと」
その他の支部大会などは全部勝ちに行くのではなく、目標にしている二つの大会に向けての調整、チャレンジの場という位置付けにした。
「ですから、そういった大会では努力してきた選手を積極的に使ってみたりすることができるんです。そこでその子が結果を出せば『いいじゃん!公式戦でもやれるじゃん!』って子どもに自信をつけさせたりとか。そういうことはチーム結成当初からやっていましたね」
「子どもたちに高校野球で通用する野球を教える」という横堀監督の指導ポリシーも結成当初からブレていない。
「それまで私が見て来た少年野球の指導って、大人が頭ごなしに子どもたちに『何やってんだ!バカ野郎!』みたいな怒り方をしていて、そのくせミスした理由とか技術とかを教えてあげないんですよね。そういう指導に憤りがあって、『そういう指導じゃなくてこういう指導ではないのか?』っていう思いがありました。
あとは指導者が子どもたちにゴロばかり打たせたり、勝つことばかりにこだわったりすることにも抵抗がありました。子どもたちはこの先どう伸びるか、どう成長するか分からないんです。だったら体が小さい子にも、もっともっとバットを大きく振らせてあげようよ。もっと子どもたちに自由に野球をさせてあげようよ。そういう思いで当初から指導をしていましたね」
最近ではそのような子どもたちの将来を見据えた指導を行うチーム、指導者も昔に比べて増えて来た。しかし、2003年当時は周囲から見ればかなり異質なチームに映ったのではないだろうか?
「異質でしたね(笑)。ですが、子どもたちのグラウンドの中の様子を見た親御さんたちから『子どもたちがイキイキしてる』とか『子どもが早く(練習がある)土日が来ないかなって言うようになりました』とか言っていただくようになって。そういうのを聞くと『この方針で間違ってなかったんだな』って思いましたね」
金メダリストも所属する病院の心強いバックアップ
本庄ボーイズでは子どもたちのメディカルチェックに力を入れている。年4回、長野県にある相澤病院に往診に訪れてもらい子どもたちの体の状態を定期的にチェックしてもらっている。ちなみに相澤病院は平昌オリンピック金メダリストの小平奈緒選手が所属している病院でもある。
また、肩、肘のチェックだけにとどまらずストレッチの指導なども受け、怪我の予防にも力を入れている。年1回、正月には理学療法士を招いて、選手たちに体の仕組みや構造、体の使い方を学んでもらうセミナーも開いている。
そのセミナーからは、子どもたちが受け身の姿勢でメディカルチェックを受けるだけでなく、子どもたち自身に体の仕組みや構造を理解してもらうことで、自分の体のことを「自分で考える」ようになってもらいたいという、チームの方針がうかがい知れる。
素振りは80回でOK?
本庄ボーイズの練習は土日のみ。平日の練習は自主練習で子どもたちに任されている。しかし横堀監督は平日練習のやり過ぎに注意をしているという。
「全国大会に初めて出場した当時のエースの子だったんですけど、冬場の平日に自宅で友達とピッチング練習をしていたんですね。私がたまたまそこを通って見つけて、『自分たちで考えながら自主練習をやってます!』って元気よく言ってくれたんですけど、ピッチングフォームが凄くギクシャクしていて普段と変わっていたんです。これは続けさせたらケガをするなと思ってすぐに止めさせました。
野球が好きな子ほど平日に色々やりたがりますから、そこにブレーキをかけさせるのも難しいですけど、代わりに外野みたいに捕ってステップして投げるっていうのをやりなさいと話して」
素振りも数振ればいいとうものではないと横堀監督は話す。
「50〜100本振れば十分です。ただし、自分がどこのコースをイメージして振っているかを考えて振りなさいと言っています」
そういうと横堀監督はボールを使ってストライクゾーンの説明を始めた。
「ベースの幅はボール6個分なんです。でもベースの端っこをボールがかする程度でもストライクになるのでストライクゾーンでいうと左右にボール1つ分広げて8個分になります。バッターの身長が170cmくらいだとしたら、一般的な縦のストライクゾーンはボール10個分くらいになります。つまりストライクゾーンは、奥行きを省略して考えてみても全部でボール80個分あることになります。ですので、それぞれのボールを芯で打つことを意識して素振りをするだけでも80回になるんです。半分でも意識してやれば40回、全部違うスイングでバットを振れるんです」(取材・写真:永松欣也)