【本庄ボーイズ】強豪高校も注目!子どもたちが自分で考える「異質」なチーム(後編)
監督とコーチに自分の考えを言える子ども達
「子どもたちが考える」
これは本庄ボーイズというチームの大きな特徴の一つであると言える。
例えば一箇所バッティングで試合を想定してランナーをつけて行うとき、ランナーをどこの塁に置くかは子どもたちに考えさせるという。
「子どもに考えてもらって『なんでそこにランナーを置こうと思ったの?』って理由を聞きます。私も練習メニューを子どもたちに伝える時に、なぜこの練習を行うのか? なぜこのメニューにしたのか? その理由を全部説明するようにしています。その理由に対して、『今の時期の練習のテーマはこうだったな』『じゃあランナーはどこに設定するべきかな?』というふうに子どもたちに考えてもらいたいんです」
取材中にこんな場面があった。普段はファーストでシートノックを受けているピッチャーの子が横堀監督のもとへやって来た。
「今日は外野でノックを受けていいですか?」
「いいけど、どうして?」
「最近フォームが縮こまっている気がしていて、外野の方が大きなフォームで投げられるのでいいかなと思います」
監督やコーチに自分の意見や考えを言ってもきちんと聞いてもらえる。そういう信頼関係があるからこそ、子どもたちも自分の意見、考えを堂々と言えるのだろう。
強豪高校のコーチも驚いた「異質」なチーム
「監督、コーチの言ったことに対しては絶対服従みたいなチームもありますけど、うちは真逆ですね。子どもたちは私やコーチともよく喋って意見とかもいいますよ。キャプテンやキャッチャーの子とかも、『(練習内容を)こういう風にしてみたんですが変でしょうか?』とかしょっちゅう聞いてきます。選手とコーチが会話する度合いでいうと他のチームの人が見たら驚くんじゃないですかね?」
練習を見学に来たとある強豪高校のコーチは実際に驚いていたという。
「うちのチームでショートをやっていた子がその強豪校に行ったんですけど、自分からキャッチャーにコンバートを志願したんですね。それで練習試合か何かの時に、そこの監督さんに『このピッチャー、今日はカーブがいいのでカーブを主体に配給を組み立てようと思いますが、いいですか?』って言ったらしくて。後からその監督さんがコーチに『あんなことを言って来たやつは初めてじゃないか? どこのチームから来た子だ?』って驚いたらしくて(笑)。それでコーチがうちの練習を見学に来たんです」
見学に訪れたコーチは、グラウンドで指導者の声が全くないこと、喋っているのが選手ばかりであること、指示がなくても子どもたちが考えて自ら動いていることに驚き、その様子が「異質」に映ったという。そして横堀監督に「だからああいう子が育ってくるんですね」と納得したそうだ。
余談だが、そのコーチはその後も定期的にグラウンドを訪れては半日ほどじーっと練習を見学しているそうだ。
本庄ボーイズは高校野球でこれまでに9名、大学野球でも1名のキャプテンを輩出している。これは常に「自分で考える」というこのチームの方針と無関係ではないだろう。
洗濯から子どもに「責任」を学ばせる
横堀監督は子どもには「責任」を持たせたいのだという。
「親御さんにはユニフォームは子どもに洗わせてくださいと言っています」
ユニフォームを子どもに洗わせることと「責任」に何の関係があるのだろうか? その関係について次のように説明してくれた。
「親御さんには子どもが洗濯するのを忘れていても代わりに洗わないでください、ほっといてくださいと言っています。汚いユニフォームのまま練習に行かせてください。洗濯したけど干さなかったなら濡れたユニフォームのまま練習に来させてください。子ども本人の責任ですからと。『そうは言っても…』って見かねて手伝ってあげる親御さんもいるんですけど、それでは自分の行動に責任を持たなくなります」
大人が先回りして手伝うことで、子どもは失敗するチャンスを逃してしまう。失敗は学びのチャンスでもある。そのチャンスを大人が取り上げないでほしいと横堀監督は考えている。
「失敗したらそこから学べばいいんです。挽回のチャンスを与えればいいんです。中学のときにそうやって失敗したことが、高校で分かるようになります。だから今は準備期間なんです」
これも「子どもたちに高校野球で通用する野球を教える」ことの一環といえるのかもしれない。横堀監督と本庄ボーイズは目先の結果よりも、子どもたちのこの先を大切にしている。(取材・写真:永松欣也)